忘れられた病棟
西暦二二四二年。ネオ・キョウトは、生い茂る蔓と砕け散った摩天楼の天蓋の下に広がる。生物発光する植物が不気味な光を放ち、雨で濡れた通りに長い影を落としている。上空では、建物の骨格が永遠の薄明を突き刺し、忘れ去られた時代の記念碑となっている。
カイは、思い出せない過去に囚われたスカベンジャーで、危険な都市をさまよっている。彼は錆びたパイプレンチを握りしめている。それは影に潜む恐怖に対する唯一の防御だ。彼はあまりにも多くの友人が、この都市の狂気に飲み込まれるのを見てきた。今夜、彼は答えを、そして生き残る術を探し求める。
「また行き止まりか」カイはつぶやき、錆びた金属の破片を蹴った。フードをかぶった人物が影から現れ、その顔はぼろぼろのフードに隠されていた。「何かお探しですか、スカベンジャー?」その人物はデジタルノイズの混じった声でかすれた声で言った。カイはその声がレクサスだと分かった。レクサスは、怪しい取引で知られる悪名高い情報ブローカーだった。
突然、地面が震えた。巨大な蛇のような姿が廃墟から現れ、その鱗は生物発光エネルギーで輝いていた。生き物が暴れると建物は崩れ落ち、その咆哮が街中に響き渡った。見捨てられた区画が目覚めたのだ。
カイは恐怖に目を見開き、よろめきながら後ずさりした。レクサスは闇の中に消え、カイは一人でその恐ろしい獣と対峙することになった。「一体全体、あれは何だ?!」カイは叫び、レンチをさらに強く握りしめた。逃げるわけにはいかない…もう二度と。
祖父が彼に見せてくれた古い巻物には、街の中心を守る古代の精霊たちの物語が記されていた。伝説だと、彼は思っていた。しかし今となっては…。「祖父はいつも言っていた。『過去は決して死なない。いや、過ぎ去りさえしない』と」と、カイはウィリアム・フォークナーの言葉を引用してつぶやいた。たとえそれが確実な死を意味するとしても、自分が何をすべきか、彼は分かっていた。
カイは落下する破片を避けながら、その生物に向かって疾走した。彼はレンチに取り付けられた間に合わせのグラップリングフックを作動させた。力強く一振りすると、彼はその生物の巨大な頭部目掛けて身を投げ出した!「ネオ・キョウトのために!」と、アドレナリンが血管を駆け巡る中、彼は叫んだ。
グラップリングフックが怪物の鱗の一枚に引っかかった。カイは激しく体を振り回し、全力で怪物の顔面に叩きつけた。怪物は苦痛に叫び声を上げ、生物発光する鱗が不規則に明滅した。衝突から目もくらむようなエネルギーの閃光が噴出した!
カイは地面に倒れ込み、呆然としながらも生きていた。その生物は顔を押さえて後ずさりした。カイは奇妙なことに気づいた。その生物の鱗の一部が鈍く生気のない色に変わっていたのだ。その時、彼は巻物の物語を思い出した。精霊たちはエネルギーの流れが乱れると弱くなるのだ。
彼には何をすべきか分かっていた。ただ、そのエネルギーの流れを妨害する方法を見つける必要があった。カイは祖父の作業場と、子供の頃そこで見つけた捨てられた音波共鳴器のことを思い出した。あれで不協和音を増幅できるだろうか? 望みは薄かったが…他に選択肢があっただろうか?
彼は崩壊した建物や落下する瓦礫を避けながら、廃墟の中を駆け戻った。祖父の工房の残骸にたどり着くと、彼は必死にがれきの中を探し回った。空気は残存するエネルギーでパチパチと音を立てていた。どこだ…どこなんだ?!
ついに、彼の指が冷たい金属に触れた。彼はソニックレゾネーターを引き抜いた。それは小さく、傷だらけで、画面にひびの入った装置だった。かすかな青い光を放っていた。「これ、まだ動くのか?」彼はつぶやき、目に希望の光が揺らめいた。あの生物のところへ、早く戻らなければならなかった。
彼は音波共鳴器を手に、その生物に向かって突進した。生物は暴れ狂い、そのエネルギーはますます不規則になっていった。カイは装置を掲げ、起動した。耳をつんざくような不協和音の波が噴出し、生物の発光する装甲を粉砕した!
その生物は金切り声を上げ、体が痙攣した。そして溶け始め、生物発光のエネルギーは無に帰した。地面が震え、そして…静寂。カイは肩で息をしながら立ち尽くし、ソニックレゾネーターが手の中で煙を上げていた。廃墟となった病棟には、再び静寂が訪れた。
雨が弱まり始め、雲の隙間から細い月が顔を覗かせた。近くの屋根から一羽の鳥がさえずる。街全体が安堵のため息をついたかのようだった。しかし、カイはこれが始まりに過ぎないことを知っていた。何かが、また別の何かがやってくるのだ…
彼は手の中にある音波共振器を見下ろした。それはただの捨てられたガラクタ以上のものだった。それは彼の祖父、彼の過去、そして彼が守らなければならない遺産を思い出させるものだった。今ならわかる、と彼は思った。何をすべきか、わかっている。
影から声が響いた。「見事だな、スカベンジャー」レクサスが現れ、ゆっくりと拍手をした。「お前は街を救ったかもしれない…今のところはな。だが、真の脅威はお前が想像するよりもはるかに大きい」彼はカイにデータチップを投げ渡した。「これにはお前が求める答えが入っている。賢く使うのだぞ」
カイはデータチップを調べた。それは不可解な記号で点滅し、隠された陰謀を示唆していた。街の救済は、その秘密を解読することにかかっているのかもしれない。しかし、誰を信じればいいのか?そして、影にはどんな恐怖が彼を待ち受けているのだろうか?
データチップを握りしめ、カイは都市の中心へと向き直った。彼はもはやただのスカベンジャーではなかった。彼は守護者であり、保護者であり、闇に飲み込まれた世界における希望の象徴だった。「私は失敗しない」と彼は誓い、その声は廃墟に響き渡った。
ネオ京都のネオンライトが点滅して光を放ち、生い茂った廃墟に不気味な輝きを投げかけた。カイは影の中に姿を消し、待ち受けるどんな危険にも立ち向かう覚悟を決めた。廃墟となった区画、そして世界の運命が彼の肩にかかっていた。